法人会計

社会保険について

社会保険について
クライアント
クライアント
給与から天引きされている金額が大きくて、手取りが少ないんですよ・・・社会保険料って安くならないんですかね?

上記のような声を、
クライアントさんの多くから聞きます。

本当に社会保険料って高いですよね。

雇用主側・経営者側になると、
さらに痛感することになるわけですが、
意外に「社会保険料の数値の決まり方」
を知らないっていう声を
現場で耳にします。

今回はこの社会保険料という
テーマで解説していきます。

ちなみに、
社会保険料を安くしたい方は
ザックリわけて3つあります。

  1. 4月5月6月の給与を極力少なくする
    (残業を少なくするなど)
  2. 選択制確定拠出年金の制度がある
    会社に勤務の場合は、その制度を
    上手く使う
  3. 法人経営者なら役員報酬を減らす

上記くらいです。

3つだけ理解しよう!等級・標準報酬・報酬月額

まずは以下の図(表)を
見てみてください。

引用元 全国健康保険協会HP
令和4年度保険料額表(令和4年3月~)の大阪エリアより

上記は、大阪府の場合の

  • 健康保険
  • 厚生年金保険

保険料額表です。

「社会保険料」
一言で言っていますが、
厳密には
健康保険料+厚生年金保険料
=社会保険料
といった感じです。

で、なんか数字が
いっぱい並んでいますが、
見るところは
3つのエリアだけです。

その1:報酬月額
その2:健康保険料
その3:厚生年金保険料

この3つを
保険料額表で把握するだけです。

今回は例として、
「月額50万円の給与を
貰っている場合」で見ていきます。

※以下の図は見やすいように、
月額50万円付近の保険料額表を
切り取ったものです。

その1:報酬月額について

報酬月額とは、文字通り
月間の報酬のことなのですが、
残業などによって毎月の報酬が
上下にブレたりしますよね?

ただ、毎月ブレている分も
含めて計算するわけではなくて、
「4月5月6月の3か月の平均値」
報酬月額を見ることになります。

この報酬月額により、
9月~翌年8月の
社会保険料が決まります。

毎月50万円固定の場合は、
平均値も50万円と
分かりやすいわけです。

が、例えば、
4月:40万円
5月:50万円
6月:60万円
が支給された場合は?
というと・・・

4月:40万円

5月:50万円

6月:60万円
=150万円(3か月合計)

150万円÷3か月=50万円(平均値)

となり、結局50万円が
報酬月額となります。
となると、
保険料額表を見てもらうと、

等級:「30(27)」
月額:「500,000」
該当する横1行の数値を見ればいい
ということになります。
ちなみに、
等級の「30」は
健康保険料の等級で、
「(27)」は、
厚生年金保険料の等級となりますが、
細かい話なので
気にしないで大丈夫です。

4月~6月の3か月の平均値が、
1年間分(9月~翌年8月)の
社会保険料に影響する
ということは

知っておいた方が良いです。

その2:健康保険料について(労使折半)

まず、
介護保険第2号被保険者に
該当しない場合

介護保険第2号被保険者に
該当する場合
とありますが、要は、

40歳未満
40歳以上(64歳まで)

どちらかで介護保険料率(1.64%)
変わってきます。

今回は、
40歳未満の数値で見ていきます。

そうすると、
「全額51,100」
「折半額25,550」
とあります。

社会保険料は
【労使折半】と言い、
会社と当事者で半分ずつ負担する
ことになっています。

ということで、自分個人が
負担する健康保険料は
「折半額の¥25,550」
ということになります。

月間¥25,550×12か月
=年間¥306,600

ということです。

その3:厚生年金保険料について(労使折半)

今まで見てきた、
「等級30(27)」
「標準報酬500,000」
横1行の厚生年金保険料の
部分を見てみます。

今回も、
「全額91,500」
「折半額45,750」
となっています。

厚生年金保険料も
【労使折半】となりますので、
自分個人が負担する
厚生年金保険料は
「折半額¥45,750」
ということになります。

月間¥45,750×12か月
=年間¥549,000

ということです。

社会保険料以外にも、もちろん税金も天引きされる

年間の額面年収が
600万円の方の場合、
上記で見てきたように、
健康保険料が約30.5万円
厚生年金保険料が約55万円

そして、
もちろんのことながら、
所得税と住民税もかかってきます。

以下はイメージ図となります。

社会保険料で出ていくお金は
税金の計算をする上で控除されますが、
それでも、ザックリと

  • 所得税で約21万円
  • 住民税で約31万円程

がかかる計算になります。

つまりは、
600万円年収から約85万円の
社会保険料が引かれ、
所得税・住民税で
約52万円が引かれるわけで、
手取りは約463万円となります。

月間で考えると、
月間額面50万円が
月間手取り約38.5万円
になるということです。

ただ、これ、
雇用している企業側は
もっと負担額があることも
知っておいた方が良いかと思います。

感謝のギャップ?!企業側(雇用側)と従業員側の感覚の差

社会保険料
(健康保険料&厚生年金保険料)は
【労使折半】なわけです。

ということは、
企業側(雇用側)も同じだけの
社会保険料の負担を
しているわけです。

以下がイメージ図です。

企業側(雇用側)は
600万円
の年収以外にも、
社会保険料として約85万円
負担しているわけです。

つまりは、
合計約685万円のコスト
企業側には掛かっています。

ですが!!!!
従業員の手取りとして
反映されるのは、
約463万円なわけです・・・

約685万円ー約463万円
=【222万円】

222万円もの
感謝のギャップが発生しています(笑)
従業員
従業員
手取りって少ないよなぁ~(怒) 

ですが、
企業側(雇用側)の目線で見ると

企業側
企業側
頑張って出してるんだよ~(涙) 

というわけです。

さらなる感謝のギャップ?!消費税負担も考えてみると…(涙)

さらに、
消費税負担も考えてみます。
ちなみに、
消費税は元々、国・地方に
納めるものだから・・・という議論は
一旦置いておきます。

企業側(雇用側)から見た時の、
お金の感覚の違いを
記事にしているだけですので。

で、早速、以下の
イメージ図を見てみてください。

前述の、企業側と従業員側の
感謝のギャップに、
さらなるギャップを生むのが
「消費税」です。

難しい話はさておき、
給与とか社会保険料には
消費税は含まれませんので、
企業側が消費税分を
負担しているとも言えます。

今回の例でいくと、

従業員への給与支給額600万円

社会保険料の企業負担額85万円
=685万円

この685万円の消費税として、

685万円×10%
(この記事を書いている現在)
=約70万円

ってことで、
消費税で出ていく分のお金も考えると、
約755万円のコストが掛かっています。

でも、従業員の手元に渡る
手取り額は463万円です。

約755万円―約463万円=【292万円】

ものすっごいギャップですよね(笑)

改めて、従業員側目線で見ると、

従業員
従業員
手取りってやっぱ少ないよなぁ~(怒怒) 

ですが、
企業側(雇用側)の目線で見ると

企業側
企業側
こっちだって頑張って出してるんだよ~(涙涙) 

というわけです。

ギャップの話は
このくらいにして、
話を社会保険料に戻していきます。

社会保険料を安くしたい場合は?

4月~6月の3か月の平均値により
等級・標準報酬月額が決まる。

そして、

健康保険料&厚生年金保険料が
決まるわけです。

ということは、

4月~6月の3か月間に支給される
給与報酬を少しでも下げれば、
等級を下げられる可能性はあります。

具体的には残業などでの
調整になるかとは思いますが。
逆に4月~6月の3か月間だけ
大量に残業をして、
それ以外の月はゆっくりする・・・
などは社会保険料の等級を
ムダに上げてしまうだけなので、
避けた方が良いと思います。

あとは、
「選択制」確定拠出年金という
企業年金制度を取り入れている
会社にお勤めの場合は、
標準報酬月額を下げられる
可能性があります。

この辺りはまた別の記事にて
機会があれば
書いてみたいと思います。

ただ、企業側が制度を
取り入れている必要がありますし、
年金として機能してしまうため
老後まで資金を動かせないという
デメリットもありますので、
一概にメリットだけとは言えません。

あと、
自分で会社を経営している場合は、
役員報酬をムダに高く
設定し過ぎないことも大事です。
自分が社長という立場で
経営している場合、
【労使折半】ではなく、
【全額負担】になってしまいます。

独立系FPとして
現場で動いていて、
社会保険の負担率を考えずに
役員報酬を上げ過ぎだなぁ~と
思ってしまう企業様に
頻繁に出くわします。

税理士さんの言いなりにならずに、
コストをある程度は
自分でコントロールするのも
大事なことかなぁと思います。

まとめ

クライアント
クライアント
給与から天引きされている金額が大きくて、手取りが少ないんですよ・・・社会保険料って安くならないんですかね? 

という質問に対しての答えは…

社会保険料の決まり方
労使折半のルールを知り
知識を付けて少しでも対策が
取れるなら取ってみるべき
…くらいでしょうか。

また、社会保険料の等級を下げると
将来貰えるだろう厚生年金の金額を
下げることにも繋がるわけですから、
バランスは大事と思います。